手に余るほど太い首が、ピタリと閉じられたファスナーの向こうに見え…神田は手を動かそうと必死に力を入れた。
指の第一関節が極僅か動くばかり…その意思に反して、身体はなされるまま床に叩き落される。
その衝撃に咽る神田の首に、節ばった何者かの指が絡んだ。
指はそのまま顎まで忍び、痛いほど強く掴んで彼の顔を上に向ける。
「良く見るとなかなか可愛いじゃないですか」
「ハハハ、そうそう…黙ってりゃ人形並みの美人なのになァ」
形を変える影にしか見えないその群れは、次第に近付いて来て探索部隊の団服の色を露にさせた。
「よくも俺達をコケにしてくれたよなァ…」
深く被ったフードの中で、品の無い口がゆっくりと開いて隙間の空いた歯を見せる。
その中から出て来た深海魚のようにグロテスクな舌が、神田の頬に向かって伸びた。
「…くっ…そ……雑魚が…っ!」
真珠の頬におぞましい感触を得て、神田は唇に再び歯列を食い込ませる。
次の瞬間…そんな彼の小さな顔目掛けて、月光を遮るように振り上げられた拳が叩き付けられた。
鈍い音と、切れた唇から零れる血が舞う中で、神田はただ…かの人の姿を思い浮かべる。
そうすれば痛みが薄らぐ事、力を得られる事…それを本能的に知っていた。
明日からは、毒に耐性を付ける訓練をしなければ…と、遠ざかる意識の中で決意する。
襲い掛かる靴底、拳…それらをスローモーションのように捉えていた。
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