ディーノは痛む肘や膝を押さえながら、目当ての木に辿り着く。何があるのかまったく想像出来ずに、恐る恐る裏側を覗き込んだ。
「!?」
それを目にした瞬間、睫毛一本動かせなくなる。
──ぅわぁっ、人が…! 人が倒れてるっ!!
木の裏側には、自分と同じ年頃の少年が横たわっていた。
ただならぬ様子で半分うつ伏せになっており、顔はほとんど見えない。
それでも彼の銀色の髪を見てすぐに、ディーノの中に一つの名前が浮かび上がってきた。
「スペルビ・スクアーロッ!」
毎日耳にしながらも、一度も発音した事の無い名前だった。
彼はディーノと同じ学校に通い、同じ宿舎に住まう同級生で、他の生徒のみならずリボーンの口からさえその名を聞くほどの有名人だった。
マフィア養成所といっても過言ではないほどマフィアに絡んだ悪童ばかりがいる中で、誰からも恐れられ一目置かれる
存在であり、その上さらに、見た者を震え上がらせるような…凄みを帯びた美貌の持ち主だった。
「スクアーロ…ッ! 大丈夫かっ!?」
ディーノは転んだ痛みも忘れて、倒れている彼に飛びつく。
いつも不遜な態度で背筋を伸ばし、人だかりを真っ二つに割って歩くスクアーロが…木の根に縋るように倒れているのは、甚だ衝撃的な光景だった。
「スクアーロ! スクアーロッ!」
ディーノはスクアーロの肩をシャツの上から掴んで、抱き起こすなり仰向けにして揺さぶる。
細身の体は難なく起こせたが、頭はぐったりとして、重く沈んだままだった。
月明かりを受ける髪が揺れ、キラキラと瞬いて見える。
まるで、純銀を極細の糸状に伸ばしてガラスコーティングを施したような、美事な銀髪だった。
今は閉じていて見えなかったが、冷たい銀青色の瞳にこの上無く似合っている事を…ディーノはよく知っている。
「スクアーロ……」
緊急事態ながら思わず見惚れてしまうディーノだったが、そうこうしているうちにスクアーロの瞼が動きだす。
それに気付いた次の瞬間にはもう、カッと開いていた。
「!」
「触るなぁっ…!」
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