スクアーロは顔に似合わぬ凶悪な唸り声を上げて、ディーノの手を思い切り振り払った。
さながら銃声のように軽く高い音が立ち、ディーノの手は瞬く間に赤くなる。
「気安く触ってんじゃねぇぞぉっ!」
怒鳴る彼はすでに、自力で身を起こしていた。けれど呼吸は酷く荒れており、白い筈の肌は赤く染まっている。
「あぁ良かった! 意識を失ってたんだぜ!」
ディーノはそう言うなり、彼に触れずに状況判断を試みた。
この数ヶ月で他人に拒絶される事にすっかり慣れてしまい、手を振り払われようと怒鳴られようと、いちいち傷付く事はなかった。驚きはとりあえず余所にやって、どうするべきかと頭を巡らせる。
「──…っぅ……」
立ち上がってふらふらと歩きだしたスクアーロは、数歩も歩くと膝を折った。ガクッと音が聞こえてきそうな崩れ方で、地面に両膝をつく。
「ダメだっ! 無理しない方がいいっ! 医者を呼んでくるからここで待ってろ!」
「──くっそっ…ふざけんなぁあコラァッ! 余計な事すんじゃねぇえっ! 刻むぞっ!」
「いいから大人しくしてろっ!」
「何だとテメェッ! 誰に向かって指図してやがるっ!?」
声だけは威勢の良いスクアーロだったが、手は木に縋っており、膝を再び浮かせる事はどうにも叶わないようだった。
だからといって簡単に手は出せず、ディーノは彼の周囲をうろうろとしながら様子を見る。
「な、なぁ…その胸、何だ? 怪我してんのかっ!?」
スクアーロの胸元に目をやりながら、ディーノはごくりと息を呑んだ。彼が着ている黒いシャツの胸元は、鋭利な刃物で斬られたかのようにぱっくりと開いている。
「怪我してんだなっ! 一体何があったんだ!?」
「うるせぇ…っ、テメェに関係ねぇだろがぁあぁ! 放っておけっ!」
「そういうわけにはいかねーだろ! 何があったか言わねーんならっ、医者とか教師とかゾロゾロ呼んでくるぜっ」
「!」
ディーノの言葉に反応し、スクアーロは殺意を込めた視線を向けてくる。
それは肌にビシビシと突き刺さるような鋭さを持っていたが、まるで手負いの獣の強がりのようだった。
「テメェッ、余計な事したらぶった斬るぞぉっ!!」
「こんな時間に宿舎を抜け出すなんて……噂に聞いた通り、強い奴に喧嘩を吹っかけて歩いてんのかっ? それでそんな怪我をっ!?」
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