「勘違いすんじゃねぇぞっ!」
スクアーロは中腰のまま叫ぶと、自分のシャツを引っ掴む。
切り口を思い切り引っ張って裂き、左胸の傷を晒した。
「!」
現れたのは、意外にも小さな傷だった。シャツの裂け具合とは裏腹に、出血もほんのわずかで──…けれどその小さな傷の周辺は赤く、やや腫れているように見える。
「その傷…っ」
「俺は戦いには勝ったっ! 負ったのは傷のうちに入らねぇこれだけだぁ!」
スクアーロはドンッ!と拳で傷口を叩き、唇をギリギリと噛み締めた。
「もしかして、刃に毒が……?」
すぐに思いついて口にしたディーノだったが、その途端にぞくりとするような目で睨みつけられる。
「スクアーロ…ッ」
銀青色の瞳には悔しさが滲んでおり、眉は苦しげに寄せられていた。冷や汗の浮かぶ額には前髪が張りつき、頬は赤くとも唇は蒼白い。
「と、とにかく医者を呼ぶからなっ! 解毒剤とか用意してもらって、ちゃんと手当てしねーと大変だ!」
「やめろぉっ!」
「うわぁっ!?」
この場を立ち去ろうとしたディーノは、腕を思い切り掴まれ、痛いほど捻りあげられた。
スクアーロの膝は力無く地面についたままだったが、腕力だけは凄まじい。
「くっぁっっ!」
「解毒剤なら、ぶんどってもう飲んだっ!」
「な、なら何でこんな…っ!」
「効いてる途中だぁぁっ!!」
苦しげな息をつきながらも言い切った彼は、突如力尽きたように瞼を落とし始める。
「だから放っておけって……言ってんだろ…ぉ、が……」
「スクアーロッ!?」
強い意志を感じさせる鋭利な瞳は、最後の一瞬まで緩まぬまま、白い瞼の奥に隠された。
「おいっ! 大丈夫かっ、しっかりしろっ!」
声を掛けても最早反応は無く、気を失った彼は頭を鉄球のように重たげに垂れて、ぐらりと倒れる。
「──…!」
スクアーロの額に鎖骨を打たれ、ディーノの体は硬直した。
鼓動が大きく弾けて、両手の行き場に困ってうろたえる。
そうはいっても片手は相変わらず掴まれたままで、解こうにも解けなかった。
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