10月10日、朝──ボスが消えた。
零地点突破が溶かされてから、初めて迎えた誕生日だった。
ルッスーリアは前夜から妙に浮かれ、レヴィは眉間に皺を刻んで頭を捻り、マーモンは「金が金が…」と相変わらずで、ベルはどこへともなく殺しに出かけていた。
この8年、ボスのいない誕生日の晩に幹部全員でテーブルを囲み、ボスの好きな酒を酌み交わすくらいの事はしてきた。
だが、本人を前にするとどうしていいのかわからないのが正直なところで、それはボス自身も同じなのかもしれない。
ボスが朝から姿を消していると知って、どこかホッとしている面々を尻目に──俺は、郊外のとある屋敷に向かった。
ボンゴレの所有する屋敷としては控え目な物だったが、主を失った今も手入れが行き届いている。
この時期は庭が美事で、塀の色がわからなくなるほどみっちりと這った蔦が、仄紅く色づき始めていた。対照的に芝はまだ青く、墓のある小高い丘まで続いている。
丘の上には大きなキンモクセイの木があり、今は花の盛りで色も匂いも強い。
俺は毎年10月10日に、花束を手にここを訪れる事にしている。
名目上ボンゴレ九代目の妾とされていたXANXUSの母親が、死ぬまで過ごした拝領屋敷と、その墓を──
「ボス……」
墓から少し離れた木陰で、ボスは独り昼寝をしていた。
近付くと、白いシャツの胸元に落ちたキンモクセイの花が見てとれる。
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