「ボスを探しに行くなら持って行けって、うるせぇんだぜぇ」
現金か武器でも入っていそうな雰囲気のケースだったが、そう重い物ではなく、中から出てきたのは上等なウイスキーと二つのグラスだった。
「お前、愛されてんなぁ」
「──…」
「早速飲もうぜ、ボス。誕生祝いだ」
俺がそう言った途端、ボスはがばりと起き上がってグラスを一つ引っ掴む。
「!」
とうとう飛んでくるかっ!?と思ったら──それは意外にも明後日の方向に投げられた。
グラスは風を無音でぐんぐん切って、丘の向こうの青空に吸い込まれてゆく。
程なくして、鈴の音に似た音に耳を打たれた。
「──…ぅ゛お゛ぉ゛ぃ、何やってんだっ!?」
「俺はボンゴレ十代目になる男だ。お前如きカスと酒が飲めるか」
ボスは悪態をつきながらもう一つのグラスを掴んで、俺の胸元に突きだす。
ふてぶてしく偉そうなこの態度──目にすれば目にするほど、誰よりこうする事が似合っていると…納得してますます惚れ込む以上、何をされても文句は言えない。
俺が注いだウイスキーを煽って、ボスはごくごくと喉を鳴らす。
あんまり美味そうに飲むから、見ていると喉が渇いた。
「フン、役に立たねぇ花よりマシだな」
「……花は、お前にやったんじゃねぇぞぉ」
強い酒は麦茶のように飲み干され、俺は二杯目を注ぐ。
ボスはグラスに唇を近付けて…そのまま暫く動きを止めた。
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