ゆらゆらと…自分の髪が目の前を漂うのが見えて、少しだけ冷静になった。
港街で育った俺は泳ぎが得意で、このくらいの事は何でもないんだけど…とはいえやっぱり酷い。
「──…っな、何だよっ! ひでぇなー!!」
ザバッと顔を上げるなり抗議すると、塩素系消毒剤の独特な匂いや味を強烈に感じて、単に水を飲んだのとは違う苦しさがあった。
喉がひりついて、思わず咳き込む。
俺がゴホゴホとやっている間に、スクアーロはプールサイドに腰かけた。
両脚を水に浸けて、身を屈めて水温を確かめるように右手を泳がす。
銀の前髪で目元は隠れているものの…整った鼻筋や唇が、揺れる水に反射する月光に照り返されていた。
あまりにも綺麗で、咳き込むのさえ忘れてしまう。
「おい、へなちょこ」
「な、何?」
「ここは屋上とは違うんだぜぇ、独りで来んな」
「……?」
「誰でも入れるだろぉ」
「──…ぅん」
「しかも宿舎の二階から丸見えなんだぜ。照明なんか点いてなくても、お前の金髪はよくわかる」
スクアーロはそう言いながら、プールサイドに両手をついて腰を浮かせた。
まるで人魚のように自然に、水の中に滑り込む。
そして水中を歩いて、俺の目の前に立った。
「俺がプールにいるの──見えたから、来てくれたのか?」
「テメェが病気持ちになったら面倒だからなぁ」
「はぁ?」
心配してくれたのかと思って一瞬ドキドキしたのに、言ってる事が…言いたい事が全然わからなくて、俺はコースロープを掴んで頭を捻る。
「えぇ…と、つまり…俺が風邪をひくと自分にも伝染りそうで困るから、早く上がれって言いに来てくれたって事?」
「バーカ、ちげぇよ。頭まで緩いのかぁぁ」
「じゃあ何だよっ、意味わかんねーよ」
「テメェもうちょっと頭使えよ。こんな時間にこんな場所で独りになって、しかもそんなカッコして、襲われたらどうすんだぁ? 軟弱へなちょこ御曹司がっ」
「……そんな恰好って? 俺、普通に水着だけど……」
「──…」
スクアーロは呆れた様子で眉を寄せ、水から片手を出した。
俺の頬に触れて、カーブを描くように撫でる。
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