「泳ぎには自信あるんだ! 絶対負けねーっ!」
「いいぜぇ、けどわかってんのかぁ? 俺に勝負事を持ちかけるって事は、命懸けるって事だぜぇ」
「えっ…!?」
タプタプ鳴ってる水が、面状の白い光を崩しながら運んでゆく。
普通に話しても声が大きく響いて、遠くに立っている感じがしなかった。
「──そ、そこまでしねーと…ダメなわけ?」
「何を賭ける気だったんだぁ?」
「賭けるなんて一言も言ってねーよっ」
「フンッ、つくづくつまんねぇ野郎だぜぇ」
「でもでもっ、泳ぎはほんとに得意なんだぜっ! 勝負のしがいはあると思うんだっ!」
「……ったく、しょーがねぇ、へなちょこレベルまで落としてやるかぁ」
スクアーロはフッと笑って言うなり、もう一度水に潜り込んだ。
月光で水面が光って視界が悪くて──…それでも確かに、白銀の子鮫のような体が迫ってくるのが見えた。
俺の膝の辺りを…ギリギリ触れないくらいにスゥッと通り抜けて、スクアーロはすぐ近くで泳ぎを止める。
コースロープの向こう側から上がった顔には、短い銀の髪が張りついていた。
まるで、生まれながらに水に棲む生き物みたいに…濡れているのが良く似合う。
「スクアーロ……」
「──…一本勝負だ。お前が勝ったら、俺の一日をくれてやる」
「えっ!?」
「そのかわり俺が勝ったら、お前の一日をもらうぜぇ」
スクアーロは手が届くほど近くで、確かにそう言った。
にんまりと笑いながら、二つの体を隔てるコースロープに手を掛ける。
「スクッ…!?」
顔が迫ってきて、名前を呼ぼうとしても呼べなかった。
何も見えなくなった瞬間、冷たい唇が当たる。
そのまましばらく、水以外の何もかもが止まってしまった。
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