『XANXUS』
キャバッローネの車が、地下駐車場に入る少し前──
XANXUSはスクアーロに茶の支度を言いつけ、応接室の上座に陣取っていた。
「ボスさんよぉ、俺は茶酌み女じゃねぇんだぜ」
「うるせぇ、テメェは黙って茶を持ってこい。一言も喋るんじゃねぇぞ」
「──跳ね馬が来る度にこれだ。いい加減うんざりだぜぇ」
スクアーロはそう言って、チッと舌を打つ。
XANXUSにとってそれは酷く耳ざわりで、許し難い音だった。
「カス…──今のは何だ?」
「聞いての通り舌打ちだぁ! いくらなんでもこんな扱いは納得いかねぇぞぉ! 俺は上に立ちたいとも人に命じたいとも思わねぇし、いつまでも実働要員で構わねぇ。お前のためなら殺しだろうとお茶酌みだろうと何でもしてやるぜっ! けどなぁぁ、俺にだってプライドってもんがあるんだ! 跳ね馬の前では御免だぁぁ!」
スクアーロが言い放ったと同時、XANXUSは無言で左手を伸ばす。
引っ張って下さいと言わんばかりな長髪を乱暴に掴んで、右拳を振り上げた。
「!」
銀青色の双眸が、沈黙の中で大きく開く。
ただそれだけで──逃げる事も防御する事もしないスクアーロの顔目がけて、拳を叩きつけた。
「……っぅ、ぐぁ!」
ゴッ!と鈍い音が立ち、拳に反動が跳ね返る。
たが、そのまま埋め込む事は避けた。
軌道を変えて衝撃を散らし、左斜めに振り抜く。
「ぅぅっ…!」
髪ごと顔を横向けたスクアーロは、その瞬間にはもう…手加減に気付いた様子だった。サッと体勢を整えて頬を押さえると、目を瞬かせる。
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