俺は今、鏡を前に自分の髪と格闘している。
別にナルシストなわけじゃねぇ。
一週間前にベルが気まぐれにやった髪型を、もう一度再現してぇだけだ。
「まず高い位置で縛って──それから抜いて、根元に巻くのか? いや先に少し取っておくのか? う゛お゛ぉぃ…なんか違うぞぉぉ!」
手順を思い出してやってみても出来なくて、出かける時間も迫ってイラついてくる。
ベルは手先が器用だから、機嫌がいいと俺の髪をいじってなんか適当にしやがる──のは別に構わねぇが、頼まれたらやらねぇだろうし、こっちも頭下げんのは御免だ。
「複雑すぎてわかんねぇぇ……」
一週間前、ポニーテールまがいの…けどそこから髪束をわざと外して垂らしたり巻きつけたりしてる凝った頭にされて、ほどく暇も無くボスに呼び出された。
「──…」
その夜は、そりゃもう凄い事になった。
ボスは口でこそ何も言わなかったが、気に入ったのは間違いなかった。
三十路を過ぎた頃から一発で終わって、背中を向けてさっさと寝てたクセに、あの夜は朝まで盛ってて…後ろからガンガン犯りながら、うなじに何度も咬み付いてきた。
つまりあれだ。
年食ってアッチの方が弱くなったわけじゃなく、問題は俺にあった事になる。
「クソ……どっか見劣りしてんのかぁぁ」
そう思って鏡を覗きこんでも、自分じゃイマイチわからねぇ。
少なくとも体のラインは崩してねぇ。顔もこれといって特に変化は……
そもそも跳ね馬やら山本やら、あの辺の二枚目どころがいまだにしつこく言い寄ってくる事から考えても、まだまだ捨てたもんじゃねぇ筈だ。
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