「ベルちゃんはまだ26よ。毎年楽しみにしてるし、命ある限り続けるわよぉ〜v ところでボスと二人でどこ行くの?」
「ルッス! よくぞ訊いてくれたぜぇ! 新しい支部の候補地が二つまで絞れたんで、ボスと見に行くんだぜぇ!」
「あら、お仕事ついでなのね」
「まあなっ、けどそのうち一つは濠に囲まれた古城なんだぜぇぇっ! 蔦がビッシリで、吸血鬼でもいそうな雰囲気のとこだぜっ!」
「まあぁ素敵っ! そこに決めちゃってよぉ〜! ハロウィンの夜にピッタリねぇ、ロマンチックでいいじゃないのぉ〜」
「だろぉぉ! 今夜は帰らねぇから留守を頼んだぜっ」
「はいはい、こっちは任せて。ボスを頼んだわよぉ〜」
俺とルッスが会話している間も、レヴィの野郎はずっと…ピアスごと眉をピクピクさせながらこっちを睨み続けていた。
「う゛お゛ぉぉぃっ! テメェいつまでもガン飛ばしてんじゃねぇぞぉ! つくづくキモうぜぇムッツリだぜ!!」
「なっ、何だと貴様っ! ムッツリとはどういう意味だ!!」
「ちょっとちょっとぉ、そんな事よりスクちゃんこれ、悪いんだけどベルちゃんの部屋に持って行ってくれない?」
俺がレヴィの胸倉を掴もうとした寸前、ルッスが畳んだ服を差し出してきた。
たぶんハロウィンの衣装だ。
「手直しが終わったから届けて欲しいの。渡せばわかるから」
「ああ…別にいいぜぇ」
そもそもレヴィに構ってる場合じゃなかった事を思い出し、俺はルッスのパシリを引き受けてやった。どうせベルの部屋は通り道だ。
コートと衣装を手に廊下を歩いて行くと、ベルの部屋の扉が見えてくる。
俺は適当な力で、普通に…のつもりだったが、つい荒っぽくノックした。
すると突然、二枚の扉が左右同時に…内側に向けてスウッと開く。
「おっ?」
片方の扉に錠が飛び出て見える事から考えて、ベルとしてはちゃんと鍵を掛けたつもりなんだろう。俺も何度か経験があるが、扉の締まりが半端なまま鍵を掛けちまうってやつだ。
「う゛お゛ぉぃ! ベルいるかぁ!?」
俺は廊下に立ったまま顔だけ突っ込み、室内を見渡した。
王子だからなのか年が離れてるからなのか、ボスにやたらと甘やかされてるベルの部屋は、とにかく広い。
しかも寝室は、ここから続く別室になっている。寝室からさらに繋がる浴室は、かなりデカくて豪華だって噂だ。
「う゛お゛ぉぃ、いねぇのかぁ!? 入るぞぉぉ!」
声を張り上げても聞こえないところを見ると、たぶんシャワーかなんかだろう。
俺はずっと廊下にいたが、やむを得ず部屋に入って衣装をどこに置こうか考えた。
「!」
まだ使っていない暖炉の上の飾り棚が適当かと思ったが、俺はそこに…意外な物を見つけてしまう。
大理石の天板にビロードの小さなクッションがちょこんと置かれていて、その上に──ベルのティアラが載っていた。
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