「お前を迎えに来たんだぜ。今から俺の別荘に連れて行く」
「はぁ゛っ!?」
「そこで二ヶ月間過ごしてもらうから、覚悟しろよ」
 ディーノは決定的な言葉を言いながら近付いてきて、背後に回るなり車椅子を動かした。
「おいっ! ちょっと待て、どういう事だぁ!? わけわかんねぇぞぉ!」
「九代目のじいさんに頼んで、お前の処分は今年いっぱい謹慎て事にしてもらったんだ。もちろん二十四時間監視の下、キャバッローネが責任をもって軟禁するって条件でな」
 ロマーリオを従えたディーノの動作は実に機敏で、車椅子は早くも廊下へと押し出されていた。
 スクアーロが自分で車輪をコントロールする事など出来る勢いではなく、いきなり現れたディーノの行動にも言葉にも、焦るばかりで抵抗しようにも叶わない。
「う゛お゛ぉぃ! 嘘だろっ…何だってそんな! おいやめろっ、俺はお前のとこなんか行かねぇぞ! 止めろぉぉ!!」
「スクアーロッ、あんまり叫ぶと顔の傷が開くぜ。あと無理やり後ろ向くのもやめろ。首の傷が開くから」
「うるせぇぇっ! テメェほんとにやめろぉっ!!」
 廊下中に響く声で叫び、さらに後ろを振り返ろうとしたスクアーロだったが、その途端、こめかみに冷たい物を当てられる。
「!」
「静かにしろ。これはあくまでも処分で、拒否権は無いんだ」
 ディーノと同じペースで横を歩くロマーリオは、銃口を向けながら凄味のある声で言った。
「ロマーリオ、銃を下ろしてやれ。そんな事しなくてもスクアーロはわかってるさ。大人しくしなければXANXUSに火の粉が降りかかるって──…なぁ、そうだろ?」
 ディーノは車椅子を押しながら身を屈ませた様子で、耳元に顔を寄せてくる。
「──…!」
 彼が音もなく笑った気がして、スクアーロは相変わらずな銃口を意識しながら、ごくりと息を呑んだ。
「スクアーロ…二ヶ月間、俺の言う通りに動いてもらうぜ。九代目のじいさんから預かったのはお前の身柄だけじゃなく、命も自由もすべてだ。いいか、逆らう事は許さねー。俺が右を向けって言ったら向く。後ろを向くなって言ったら、向くんじゃねーぞ」
「跳ね馬っ……」
「そんなに心配しなくても平気だぜ。俺はXANXUSより、ずっと優しいからな」
 そう言って笑う声はいつもの調子で…けれどスクアーロの胸には、空恐ろしいほどの不安がじわじわと広がっていった。



※「飼い殺しの虚しさは何物にも例えられない」sampleおわり
※ボスもちゃんと出てきますのでご心配なく!

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