「スクアーロ、今夜は君の誕生日だったね」

 ラウンジで独り飲んでいたつもりの俺は、マーモンの声にハッとした。
 ぬいぐるみ同然で眼中に無かったが、そういえばずっと目の前にいた気がする。

「今夜っつーか、今日一日丸ごと誕生日だぜ」
「揚げ足を取らなくてもいいよ」
「事実を言ったまでだぜぇ、それで、俺の誕生日がどうかしたのかぁ?」
「僕は毎年、この日は欠かさず君の傍にいるようにしていたんだよ」
「あ゛ぁ?」
「稼ぎ時だからね」

 マーモンは小さな両手でグラスを挟むように持って、レモネードを飲む。

「そういや、毎年世話になってたなぁ」
「誕生日の夜くらいボスの夢が見たいって──君は毎年、神妙な顔で依頼してきたね」
「夢なんかじゃ意味ねぇのわかってたけどな……年に一度くらい、ちったぁ甘えても許されるかと思っただけだぁ」
「うん、それくらいいいと思うよ。僕としては大歓迎さ」
「確かAランク報酬一回分だったよな? 今考えてみると、あれって誕生日割引だったのかぁ?」
「一応ね」

 ほぼ無表情のマーモン相手に、俺は思わず苦笑する。
 マーモンの見せる幻覚は正直いまいちで、俺は十六歳のままのXANXUSに、毎年毎年──夢の中でぶん殴られていた。

 目が覚めて、鏡に映る自分を見ると現実を思い知らされて──その度に「来年はもう頼まねぇ…」と凹むのに、一年経つと忘れちまってまた頼む……。

「稼ぎ口が一つ減っちゃったよ。まあ、いいけどね」

 マーモンがそう言った時、ラウンジの扉が開かれる。
 そこには、ちゃんと年相応なXANXUSが立っていた。

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